月島実紀様から頂いた作品です。



勝つのはどっちだ?



「今回は仲間を助けてくれたお礼に逃がしてやるけどな、次はないと思えよ。コソドロさんよ」
「そいつは期待しているぜ、名探偵君。それじゃ、そこにいる素敵なレディーたち、又月下の元で御会い致しましょう」
と言うと現代のアルセーヌ・ルパンだと名高い白き怪盗・怪盗キッドはからくり屋敷を後にした。
その様子を黙って見ていた哀はポツリと独り言を呟く。
それは独り言と言うより、特定の誰かに向けられて発せられた嫌味であることは明白なのだが。
「まるで誰かさんにそっくり」
「あ?」
「現代のアルセーヌ・ルパンさんはどこぞの気障な高校生探偵さんとそっくりね」
「灰原、お前俺に喧嘩売ってるのか?」
「そんなつもりはなくてよ」
「そーかよ。俺にはどう見ても、俺への当てつけの様にしか聞えなかったけどな」
突然険悪なムードが漂い始めたコナンと哀の二人を歩美、光彦、元太は交互に見遣った。
歩美はオロオロし、光彦はいつもの事だと呆れ顔をし、元太といえば、面白そうに二人を眺ている。
三者三様である。
「私の苦手なタイプだわ」
「お前、マジ可愛くねーな」
「私は貴方に可愛いと思われても、ちっとも嬉しくなくてよ?逆に気持ち悪くて、寒気がして来るわ」
「そーかよ。俺は別にそんなこと思ってねーから安心しろ」
「そうね」
「お二人共、お話は済みましたか?」
「光彦」
「全く、勘弁して下さいよ。あなた方はどうしていつもそうなんです。見てくださいよ。あなた方を待っていたお陰で、陽が暮れちゃったじゃないですか!」
これ以上この二人を待っていたら夜になってしまうと察した光彦は、遂にコナンと哀の間に割って入った。
「そうだぞ、コナン。俺なんか腹減って、今にも倒れそうだぜ」
(オメーは食い過ぎだっつーの!)
「そうね、そろそろ帰らないと今度こそ道に迷ってしまうわ。ねえ、いつも怪盗さんに負け続けの名探偵さん?」
「あ?」
「だって、事実じゃないの?博士から色々聞いているわよ」
(博士のヤロォ、余計な事言いやがって!)
光彦は相変わらずなコナンと哀を見つめながら、大きく溜息をついた。
この二人は何なのだろうか。
クラスメイトでもなければ、ただの友だちというわけでもない。
ただ光彦にも分かっていることは一つだけある。
それはコナンの方が少なからず、哀の事を意識し出しているということだ。
「灰原、今日はやけに突っかかるんだな」
「あら、貴方もたまには洞察力が良い事もあるのね」
「ヤロォ」
二人の関係が微妙なのは相変わらずの様だ。
「コナンくん、ご愁傷様です」
光彦はコナンの心中を察したのか、大きく溜息をつきながら、独り言を呟いた。
駆け引き。
勝つのはどっちだ?
勝負はまだ分からないが、勝者は彼女の方だと光彦は悟る。
「推理ならまだしも、相手は彼女ですから。コナンくんには勝ち目はないでしょうね」
『本当にご愁傷さまです』と光彦は心底コナンに同情した。




サイト管理人より



「ユーモレスク」(閉鎖されました)管理人、月島様から頂いた原作46巻「からくり屋敷編」その後話です。私もこの話、大好きなので、フリーをいい事に頂いてしまいました。女性の天敵が多いコナン君、中でも哀嬢には一番敵わないのではないでしょうか^^;)?