One Holiday



 久し振りにベッドで眠りについた哀を起こしたのは目覚まし時計ではなくクマゼミの大合唱だった。8月も半ばに差し掛かり、夏休みも残り日数の方が少なくなって来ているというのに蝉達はまだまだ真夏の恋を歌い上げる気のようだ。
 時計を見るとまだ7時を少し回ったところ。ベッドに入ったのが3時過ぎだから4時間ちょっとの睡眠で叩き起こされた事になる。身体を起こすと窓から差し込む光の強さに軽く頭痛を覚えた。今日もギラギラした太陽が順調に気温を上げているようだ。そういえば蝉が鳴き出す平均気温が25度だったと外の気温を想像してうんざりする。
 シャワーでも浴びようかと部屋を出るといつにもなく阿笠邸がやけに広く感じられた。阿笠が少し前に亡くなった叔母、定子の初盆のため阿笠家の墓がある地方都市へ出掛けて既に4日経つ。家にいても互いに地下室や実験室で過ごす事が多く、同じ空間にいる事はあまりないのに、それでも阿笠の気配が感じられない事を寂しく思う自分に哀は驚いた。一人ぼっちの日常などすっかり慣れていたはずの自分が、たかが数日を一人で過ごす事に寂しさを感じるなど身体だけでなく心まで子供に戻ってしまったようだ。
 哀は浴室へ入るとそんなバカバカしい思考を吹き飛ばすかのように高めに温度設定したシャワーの蛇口を少し乱暴に捻った。


 濡れた髪を乾かしつつキッチンのカウンターテーブルに行儀悪く肘をつき、朝食のシリアルをかき混ぜる。『睡眠不足を不問にするかわりに朝食は必ず摂る』という阿笠との約束はここ数日間、彼の不在をいい事に続けている徹夜生活でも律儀に守っていたが、何となく食欲が湧かず哀は持っていたスプーンをテーブルに置いた。
 「……博士の帰りは夜だったわね」
 阿笠家の墓がある場所はなかなか古い土地柄で、今でも8月13日の迎え火から16日の送り火まで盆行事が色々あるらしい。全てを済ませ阿笠が帰宅するのは17日の夜になるはずだった。
 結局、シリアルはほとんど口にせず、ぬるくなった珈琲を飲みながら今日はどうしようかと考える。
 今朝方まで取り掛かっていた実験は準備に日数がかかる分だけ結果が出るまでに時間を要する類のもので、実験結果が出る明後日までは地下室にいてもする事がない。探偵団の子供達も歩美が両親と沖縄へ旅行、光彦は一家で帰省、元太が岐阜の叔父の家へとそれぞれ出掛けている。同じく小学生の夏休みを持て余しているはずの高校生探偵は昨日から居候先の幼馴染親子と共に招待された大阪の地で色黒の西の高校生探偵といつものように事件に巻き込まれているらしい。昨夜、二人して電話して来ては使用されたと思われる毒薬についてしつこく尋ねられた。
 彼ら以外に自分の元へ押し掛けて来る人物はいないはずで、すなわち今日は哀にとって完全に自由な一日という事になる。とはいえ急に手に入れた時間を持て余していると言っても過言ではなかった。日頃は誰にも煩わされる事なく一人で研究に打ち込みたいなどと思っていても、いざそれが現実となると開放感よりも取り残されたような孤独感に包まれるのだから自分勝手と言えばそれまでである。
 そんな自己分析に哀は思わず小さな溜息をついた。


 元々暑さが苦手な性質もあり、今日のような日に――ましてや昼間に外出するのは面倒だし、自分一人のために家事をする気にもなれない。まだ気だるさが残る身体をソファに沈めると何とはなしに外を眺める。今朝まで数日かけて行った実験はかねてから一度試してみたかったもので、共に出掛けようと誘ってくれた阿笠にそう言って断った事は嘘ではなかったが、真実でもなかった。
 「哀君を親類達に紹介したかったんじゃがのう……」
 残念そうに呟かれたその言葉は家族だと言われているようで嬉しかったが、たった一人の姉を亡くしながらその弔いも満足にできない状態で『墓参り』という行為に同行する気にはなれなかった。そんな哀の気持ちを彼なりに察してくれたのだろう。いつもなら彼女を何日間も一人きりにするような事を決してしない阿笠だったが、隣で聞いていたコナンがうんざりするほど心配の言葉を並べながらも結局一人で出掛けて行った。毎日、旅先から電話で無事を確認して来る事は言うまでもない。
 しかし、いつか自由に姉の墓を訪ねる事ができるようになったとしても足を向ける事はできないだろうと哀は思う。それはまだ哀が心のどこかで明美の死を実感できずにいるからに他ならない。勿論、理性では姉の死を納得しているし認めてもいる。自分に姉の死を告げた新聞記事は穴が開くほど読み返したし、ビニールシートで覆われた姉の遺体を前に立ちすくむ眼鏡の少年と少年を後ろから抱きしめて泣いている少女の写真は目を閉じても簡単に映し出せる。研究室を飛び出し、新聞を握り締めて問いただした時のジンの表情も、抗議のために研究を中断した時に組織から見せられたおざなりな報告書の内容もくっきりと記憶に残っている。
 それでも、もしかしたらどこかで生きているのかもしれない、組織を壊滅させて元の身体を取り戻し、自由を手に入れたらあの笑顔で自分に会いに来てくれるのではないか、そんな夢のような想像が時折哀の脳裏に浮かんでは消えて行った。
 日本ではお盆は死者がこの世に戻って来る行事だと言い伝えられている。例え幽霊でももう一度明美に会いたいという気持ちがないといえば嘘になる。だが、盆行事や墓参りなどをすれば明美の死を認めるようでとてもそんな気にはなれなかった。そして、そんな自分の思考を封印するかのように研究に没頭し、気が付けば盆などとっくに過ぎていて、気が抜けたかのように深い眠りについたのが昨日の夜の事だったのである……


 そんな事をボーっと考えている間に思ったより時間が経っていたらしく、早朝から大合唱していたクマゼミの鳴き声が少し小さくなっていた。時計を見ると10時半を少し回ったところ。せめて本でも読もうかとコナンが置いていった推理小説の山から適当に一冊選ぶとページを捲っていく。やがて遠くからアブラゼミの声が響き始める頃、ソファーから哀の規則正しい寝息が聞こえて来た。


 「たまのお休みなんだからどこかに出掛けてくればいいじゃない」
 明美の呆れ声が電話口から聞こえる。
 「だって急に決まった休みなんだもの。しょうがないじゃない」
 「それにしたって年頃の女の子が休みの日にどこへも行かないで一日中寝てたなんて……小言の一つも言いたくなるわよ」
 「じゃあお姉ちゃんはこの前の休日何してたの?」
 そこまで盛大に嘆かれては面白くないとばかり言い返す志保の言葉に明美はウッと詰まると小さな声で、
 「洗濯…とか?」
 「何それ、それじゃ私の事言えないじゃない。自分にできない事を私に言わないでよね」
 一転して強気になった志保に今度は明美がムキになって答える。
 穏やかなこんな会話に自分がどれほど救われているか、同じように感じてくれているなら嬉しいと姉妹は互いに思っていた。
 「だったら次のお休みはお姉ちゃんと買い物にでも行こうかしら?」
 「いいわね。そういえばそろそろ新しいお財布が欲しいと思っていたの」
 「じゃ、買い物して美味しいものを思いっきり食べましょ。約束よ」
 「ええ、約束。じゃ、またね」
 電話はいつもそんな不確実な約束で終わったがそれで十分だった。互いに実現を心から望んでいる事が何よりも大切だったから。


 額に冷たい感触を覚えて目を開ける。瞳に映った天井の風景からそのままソファで眠ってしまった事に気が付いた。身体が朝よりもだるいとボンヤリ感じたその時、掛けられたブランケットに驚いて身を起こすと額から冷水で濡らされたタオルが落ちた。
 「お、起きたんか」
 傍らから聞こえて来た少し低い関西弁の声に顔を向けると昨夜電話で話した西の高校生探偵が嬉しそうにこちらへ歩いて来るのが見える。
 「貴方、どうして……」
 「事件解決して帰ろうとしたら勝手にくっついて来やがったんだよ」
 哀のかすれた声に答えたのはぞんざいな言葉が似合わない少年だった。
 「いくら博士が留守だからって倒れるほど無理してんじゃねーよ」
 「オレらが入って来たらねーちゃんがソファの上で魘されててな。何やしんどそうやし、ちょっと熱もあるみたいやったし」
 「ま、夏バテやと思うけど」――そう言って差し出されたマグカップには温かいカモミールティーが入っている。
 「博士なら今夜は遅くなると思うけど?」
 「じいさんに用やない、今日はねーちゃんに事件解決のお礼を持って来たんや」
 置かれている状況が理解できずとりあえず発した言葉にニコニコ返され、哀はますます不思議そうな表情になった。
 「私、あなたにお礼を言われるような事したかしら?」
 「お前の情報のおかげで毒薬の保管場所が特定できたんだよ。だから『土産に何か良い物ねーか?』って聞いたらコイツがいきなり一緒に持って行くなんて言い出しやがったんだ」
 「そやかてオレもねーちゃんにめっちゃ感謝してんのに工藤だけええカッコして土産渡すなんてありえへんやろ?」
 「なんだよ、オレがいついい格好したってんだよ!?」
 「そんなんいつもやろ?」
 唐突に始まった漫才に哀の表情が緩む。その姿にコナンと平次もホッとしたのだろう。大阪で有名なわらび餅を取り出し彼女に差し出して来る。
 「食欲ないかもしれんけど……これやったら食べれるやろ?」
 「ええ、ありがとう」
 「ほなオレ、もっかい温かいお茶淹れ直してくるわ」


 甘い物と温かいお茶で少し顔色が良くなった哀が再びソファに横になるとコナンと平次は彼女の向かいの椅子に陣取った。
 「もう大丈夫よ。夜には博士も帰って来るし」
 「お前の『大丈夫』はあてにならねーんだよ」
 「とにかくオレらはここにおるからゆっくり休みや」
 有無を言わさぬ二人の様子に抵抗を諦め哀はゆっくりと瞳を閉じた。


 誰かの話し声に目を覚ますと携帯で喋っているコナンの姿が視界に入った。
 「あ…起きたみたいだから代わるけどよ、あんまり大声で喋るんじゃねーぞ」
 「歩美だけど話せるか?」と携帯を差し出され頷きながらゆっくりと身体を起こす。
 「あ、哀ちゃん?大丈夫?」
 「ええ、大丈夫。軽い夏バテだから。江戸川君が大袈裟なのよ」
 『大袈裟』という言葉に眉根を寄せるコナンの姿に思わず苦笑してしまう。
 「良かったぁ。今ね、沖縄なんだけど、これから帰りの飛行機に乗るんだ。明日お土産持って哀ちゃんの所に遊びに行こうと思ってたんだけど……大丈夫?明後日にした方がいい?」
 「大丈夫よ。今日一日寝たら治るから」
 「本当?元太君と光彦君も一緒に行くつもりなんだけど行く前に連絡するから。辛かったらちゃんと言ってね?」
 「ええ、分かったわ。それじゃあなたも気を付けてね」
 携帯をコナンに渡して再び横になる。歩美と約束してしまった以上今日はもうゆっくり休んで明日に備えるつもりだった。そんな哀をコナンが何か言いたげに渋い表情で見つめている。首を傾げる哀に笑いながら解説してくれたのは平次だった。
 「気にせんでええ。工藤は自分の言う事を素直に聞かんねーちゃんが歩美ちゃんと約束したからって大人しい寝てんのが気に入らんだけなんやから」
 「バ、バーロー!余計な事言うんじゃねーよ!」
 プイと横を向いてしまったコナンの様子を上目遣いでチラリと確認すると大人げないその姿に思わず苦笑してしまう。
 しかし、何より電話で交わした約束を守れるように努力できる事が哀には嬉しかった。 
 ――明日の休みは友達が遊びに来る事になっているの
 夢の中で姉に言う事ができなかった言葉を心の中で呟く。窓の外では少し穏やかになって来た日差しが庭の木々の陰を少しづつ長くし始めていた。
 思ったよりも退屈ではなかった一日に満足感を抱いている事に哀自身気付いていなかった。


 身体が疲れていてもそうそう眠れる訳でもなく天井を眺めながらぼんやりしていると、大きな音がして玄関が開き阿笠が駆け込んで来た。
 「哀君、大丈夫かね!?」
 ソファに駆け寄る阿笠に驚いて身体を起こそうとすると「いいから、寝てなさい」と、慌てて大きな手に止められる。
 「おい、博士。コイツ一応病人なんだからさ。もうちょっと静かに入って来いよ」
 「すまんすまん。それで哀君の具合はどうなんじゃ?」
 「少し夏バテしただけだから大丈夫よ。それより博士、夜になるんじゃなかったの?」
 ニッコリ笑って自分の頭を撫でる大きな手の感触が心地良く、哀は思わず目を瞑り阿笠の説明を聞いた。
 「やっぱり君を一人にしておくのは心配での。電車で帰る予定を飛行機にしたんじゃよ。空港に着いてここへ電話を掛けたら新一君が出て事情を聞かせてくれての、驚いてタクシーを飛ばして来たんじゃ」
 「それにしても早かったなー。そのタクシーの運ちゃん、かなり無理なスピード出したんちゃう?」
 「君達が哀君が寝込んでおるなどと言うからじゃ。やれやれ、運転手さんには悪い事をしてしまったわい」
 「心配かけてごめんなさい」
 よほど自分の容態を心配してくれたのだろう。額から吹き出た汗を拭く阿笠の姿に素直に謝罪の言葉を述べる。それをまた面白くなさそうに見つめるコナンに哀が再び首を傾げると、
 「……この仏頂面は自分も心配したのにねーちゃんがじいさんにだけ素直に礼言うんが羨ましい…イテッ!!」
 「さっきから余計な事ばっか言ってんじゃねーよ!」
 「ちょっと、工藤君…!」
 コナンに余程強烈に足を蹴られたのか涙目になる平次に哀が思わず抗議の声を上げる。そんな哀に反論しようとするコナンをまあまあと宥めながら阿笠も笑っている。
 先程までとはうって変わって賑やかな空気が阿笠邸を包む中、哀はいつの間にか再び眠りについていた。


 再び目を覚ました哀の目に映ったのは少し薄暗くなった窓の外の景色だった。ヒグラシの静かな鳴き声が耳に心地良い。キッチンからコナンを始めとする男三人が四苦八苦しながら夕飯の準備をする声が聞こえて来る。
 「全く……こんな調子ではきちんと食べられるものができるのか心配じゃのう」
 「任せときって。こんな事もあろうかとちゃんと考えて来てあんねん」
 「元太じゃあるまいし……まさか『うな重』とでも言うんじゃねーだろうな?」
 「文句ばっかり言うんやったら工藤は探偵事務所に帰って食うたらええやろ」
 「べ、別に文句なんか……だからこうして手伝ってんだろ?」
 「新一君の場合は手伝っておるのか手間を増やしておるのか微妙な気がするんじゃが……」
 阿笠の冷静なツッコミに平次は笑い、コナンは苦虫を噛み潰したような顔になる。
 「その言い方、灰原に似てるよな……」
 「そりゃそうじゃ。家族は似て来るもんじゃからのう」
 サラリと当然のように出て来たその言葉に哀は胸が熱くなり慌てて額に乗せてあったタオルを下ろした。


 カボチャの煮つけ、ニラと鶏ツミレのスープ、うまきといった夏バテ解消メニューの手本のような夕食を四人で賑やかに食べ、温めのお風呂にゆっくりと浸かると身体は随分楽になった。
 「ほら、ゆっくり飲めよ」
 哀がまだ少し昼の暑さの名残を残した風に当たっているとコナンがジャスミンティーを入れたコップを差し出して来た。風呂上りに飲みやすいように適度に冷やしてある。
 「ありがとう」
 受け取って言われた通りゆっくりと飲む。火照った身体に水分が沁み込んでいくような心地よい感覚が広がった。
 「今日はごめんなさい。貴方にもずいぶん迷惑かけたわね」
 「いや、実は昨夜電話した時からちょっと様子がおかしいと思ってたんだ」
 「えっ…?」
 思ってもいなかった言葉に哀はコナンの顔を凝視した。
 「何か追い詰められているような声に聞こえてさ……服部もいつもより余裕ない口調だったって言うしよぉ」
 全くそんな自覚はなかっただけに驚いてしまう。確かにここ数日、色々な事を忘れたくて研究に没頭していたが、それをあんな電話の会話だけで察してしまうとは……
 「これだから探偵って人種は……」
そう溜息をつく哀にコナンが更に意外な事実を告げる。
 「言っとくけど別にオレ達が探偵だから気付いたんじゃねーぞ。博士もお前の様子がおかしいからって慌てて帰って来ただろ?」
 「そういえば……」
 哀は戸惑いのあまり視線を彷徨わせた。そんな哀の不器用さに少しの苛立ちと可愛さを感じながらコナンは静かに続けた。
 「お前さ、自分が独りだと思い込んでねーか?」
 「……」
 「今のお前は独りじゃないんだぜ。博士も歩美達もいつもお前のこと気にしてるんだ」
 そこで少し間をおいて哀の方に一歩近寄る。
 「お前がいろんな気持ちを抱え込んでる事も、それを整理できないでいる事もみんな分かってんだ。けどよ、オレ達が受け止めてやっから無理すんなよ。お前は過去を全部なかった事にできる程器用じゃねえんだし。辛い時に『辛い』って言えなくても独りじゃないって事だけは覚えとけよ」
 深い青色の瞳に正面から見つめられ哀も視線を逸らす事ができない。やがて静かに滑り出した言葉はいつもの自分からは考えられない程素直なものだった。
 「私……ずっと賑やかな所は苦手だと思っていたの。でも今日、貴方達が来てくれて……博士が帰って来てくれて段々心が軽くなって行ったわ。それに明日、みんなが来てくれるのが凄く楽しみなの。こんな気持ち初めて……」
独り言のように呟く哀の言葉をコナンは黙って聞いている。
「組織の事やお姉ちゃんの事が頭を離れる日はないわ。解毒剤だって本当は一刻も早く完成させたいと思ってる。貴方の言う通り私は不器用だから……でも……明日一日だけでも普通の夏休みを過ごしてみたいと思うの。大切な家族と友人と楽しい休日を過ごしたい……一日くらいそんな日があっても許されるような気がするから……」
 「そっか……」
 100パーセント望む答えではなかったが少し吹っ切れたような哀の台詞にコナンは頷いた。簡単に変わってくれるような女ではないと分かっている。ならば今はたとえ一日でも前向きに楽しむ事を選んでくれた事に満足しよう。
 「それじゃ明日のために今夜は早く寝ろよ」
 コナンは空になったグラスを受け取りクルリと哀に背を向けた。


 後日。返却された哀の夏休みの絵日記には他の日よりもずっと丁寧に書かれた8月18日のページに担任、小林澄子の優しいコメントが付けられていた。



あとがき



 「灰原の日」の企画参加作品です。8月18日が灰原の日という事でしたが実際は8月17日の話になっています。
ちょうど直前に出たコミックスでまたもや平次と哀ちゃんがニヤミスだったのがあまりに悔しくて平次の登場となりました。ところで平次が登場するとどうして毎回食べ物が絡むのか自分でも謎です。
 タイトルは前から使ってみたかったものなので珍しく簡単に決まりました。