Little Private Eye



「トロピカル・マリンランド〜?」
工藤邸の居候、服部平次と黒羽快斗が息を合わせるかのようにそう叫んだのは志保がいつもより早く出勤した日の朝だった。
「ああ、今、オレの両親と弟が日本へ来てるのは知ってるだろ?」
「ん?ああ」
「コナン君だよね。写真で見ただけだけど、本当、誰かさんが小さくなってた頃にそっくりでv」
その言葉に新一が「一言多いんだよ」と言いたげに快斗を黙って睨みつける。
「で?トロピカル・マリンランドとコナン君がどないしたんや?」
「『日本にいる間に一度連れてってあげてくれない?』って母さんに頼まれたのはいいんだけどよ、ガキの相手はオレや志保よりオメーらの方が得意だろ?一緒に行ってくれねえかなと思ってさ」
「今度の土日ならええで。警察学校は直(宿直)でもない限りイヤでも追い出されるよって」
「俺も今度の土日ならどっちでもいいけど……」
「……じゃ、決まりだな」
「でも名探偵、まさか俺達にコナン君を預けて自分はクールビューティーと過ごそうだなんて考えてないよね?」
「バ、バーロー、んな訳ねえだろ」
「怪しいなあ〜」
さすがに快斗は鋭いなと思いつつ新一はポーカーフェイスを崩さなかった。
「ほな、今度の土日、どっちにするんや?」
「そうだな……父さんが月曜にはロスへ帰りたいって言ってるから土曜の方がいいだろうな」
「じゃあ、土曜日だね」
「頼んだぜ」
「任せとき。コナン君、ごっつ楽しませたるで」
この時、新一は男の友情がいかに儚いか知る由もなかった。



「す、すまん、工藤、堪忍や」
テレビカメラで中継されている訳では勿論ないが、携帯電話を持って平謝りする平次の姿が簡単に想像でき、新一は思わず苦笑した。
「大瀧ハンから電話あってな、『ちょいやっかいな事件が起こってもうて手伝うてくれへんか』って……ほんで……」
「……もう新幹線の中なんだろ?分かったよ」
「すまんなあ」
「気にすんなって。まだ黒羽がいる事だしよ」
そう言って通話を切った瞬間、二階から大きな荷物を持った快斗とぶつかる。
「痛っ!おい、何だよ、その荷物?」
「何って…仕事に決まってるだろ?」
「仕事?」
「昨日言ったじゃん。トロピカル・マリンランドのショーに出る予定だった真田一三さんが急に体調壊して代打する事になったって」
「何ィ!?」
「やっぱり聞いてなかったんだ。名探偵、クールビューティーの手料理に上の空だったからねえ〜」
「しかしオメーほどの男が代打っつうのも……」
「仕方ないじゃん。マジシャン、黒羽快斗はまだまだ売り出し中の新人なんだからさ」
快斗は苦笑いすると「ま、お詫びって訳でもないけど、ハイ」と、懐から何やら封筒を取り出し新一に差し出した。
「何だよ?」
「今日のショーのチケット。良かったら三人で見に来てよ」
「あのなあ、オメーの手品はオレも志保も日頃からイヤって程見てんだよ!」
「そんな事言わないでさ。俺以外にも人気歌手とか出るみたいで結構ネットオークションで高額取引されてるらしいし」
「……」
「じゃ、一足お先に」
快斗はそれだけ言い残すと、さっさと工藤邸を後にしてしまった。



「……で?結局、あなたと私、二人でコナン君を連れて行く事になった訳?」
「あ、ああ、悪ぃな」
「別に。ただ、このたくさんのお弁当、あなたが食べてくれるのよね?」
「おい、いくら何でもこんなには……」
うろたえる新一に志保はクスッと笑うと「冗談よ。それよりそろそろ有希子さんがコナン君を連れてくる頃じゃない?」と、弁当箱をバスケットに詰めた。
玄関を出るとタイミングを計ったかのように銀のジャガーが暴走して来る様子が目に映る。
「……ったく。相変わらずなんだから」
ジャガーが工藤邸の入口数センチのところにピタッと止まったかと思うと有希子が運転席から降りて来た。
「おはよう、新ちゃん、志保ちゃん。今日はコナンちゃんの事、よろしくねv」
「……で?オレ達にコナンを預けて母さんはどうする気なんだよ?父さんは?」
「ヒ・ミ・ツv」
「……」
こういう反応が返って来た時は何を聞いても無駄である。
「志保お姉ちゃん、おはよう」
コナンが助手席から降りて来ると「ボクも手伝うよ」と、彼女の手から両手でバスケットを受け取った。
「あら、ありがとう、コナン君」
「これ、もしかしてお弁当?うわ〜おいしそう!」
バスケットを開け、弁当箱の蓋を開けるとコナンが満面の笑みを浮かべる。かつて自分が故意的にやっていた仕草でもあり、新一は苦虫を噛みつぶしたような顔で小さな弟を睨む事しか出来ない。
「おはよう、お兄ちゃん……あれ、なんか機嫌悪そうだね」
「んな事ねーよ」
「……どーせなら志保と二人、ロマンティックに過ごしてえのによ」
「なっ…!?」
突然、自分の声が、しかも思いっきり本音を言っている事に新一はビクッとして思わず周囲を見回した。見るとコナンがかつて新一が使っていた変声機を手にニンマリ笑っている。
「へへへ、大当たり?」
「……このマセガキ!」
「もう、新ちゃんったら……20歳も年の離れた弟相手にムキにならないでちょうだい」
有希子が呆れたように溜息をつくと新一とコナンを引き離した。
「……それじゃあ、確かにお預かりしましたから」
「悪いわね、志保ちゃん。午後9時の閉園時間に正面ゲートの前に迎えに行くから」
「まさかその車で来るんじゃねーだろーな?」
「あら、他に車なんてないもの。これ以上ない派手な目印だし丁度いいでしょ?」
「……」
「じゃあねv」
有希子は鮮やかにウインクを決めるとジャガーに乗って走り去ってしまった。



土曜日のトロピカル・マリンランドは想像通り家族連れやカップルで賑わっていた。
「……予想はしてたけど人、人、人、ね」
「ああ。志保、大丈夫か?」
「え…?」
「オメー、人が多い所って苦手だろ?」
「まあね。でも……あんなに嬉しそうなコナン君を見てるとそんな事は言ってられないわ」
「ったく、テーマパークならアメリカにもあるっつーのに……」
溜息をつく新一を他所にコナンは二人より一足先のところで元気に手を振っている。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん、早く早く!」
「どーせ急いで行ってもまた一時間待ちだぜ?」
「いいよ。お兄ちゃんに並んでもらってボクはお姉ちゃんとアイスクリームでも食べに行くもん」
「……」
無邪気に極悪な台詞を吐くコナンに新一は思わず頬を引きつらせた。
「……弱いお兄ちゃんね」
「うっせーな……」
案の定、次に並んだアトラクション『海底五万マイル』は一時間半待ちだった。



「ねえ、黒羽君の陣中見舞いに行かない?」
志保が思い出したようにそう呟いたのは駐車場に戻って用意して来た弁当を三人で囲んでいた時の事だった。
「……そういえばアイツ今日ここでショーやるんだったな」
「黒羽ってお兄ちゃんによく似た元怪盗KID?」
「ああ、かっこつけで女たらしな大泥棒……って、おい、コナン、オメーどうしてそれを…!?」
「この前お兄ちゃんの家に電話したら服部平次って人が出て色々教えてくれたんだ。『お兄ちゃん誰?』って聞いたら『オレはお前の兄貴のライバルで西の名探偵と名高い服部平次、で、もう一人同居人がおってな、元怪盗KIDやっとった黒羽快斗っつう気障なヤツや』って」
「……」
相変わらず羽毛より軽い平次の口に新一は頭を抱えてしまう。
「……コナン、オメーその事誰かに言ったか?」
「お父さんとお母さんには言ったけど……二人して『やだ〜、コナンちゃんったら今頃知ったの?』とか『お前もまだまだだな』なんて言うんだもん」
「ハ、ハハハ……」
新一は思わず苦笑するとコナンの頭をポンッと叩いた。
「いいか、この事はあんまり人に言うんじゃねーぞ。その代わり今からその元大怪盗に会わせてやっから」
「うんっ!」



快斗の楽屋はいわゆる大部屋という数人で使用するものだった。『新進マジシャン』である以上この扱いは致し方ないところだろう。
「よぉ、黒羽」
「あれ?名探偵、来てくれたんだv」
新一が顔を見せると快斗が人懐っこい笑顔を向ける。
「……はじめまして」
「コナン君だね?はじめまして、俺は黒羽快斗。君のお兄ちゃんには色々な意味でお世話になってる。よろしくね」
快斗は意味ありげにウインクしてみせると「せっかく陣中見舞いに来てくれたなら何か持ってきてくれればいいのに」と、新一の手元を見た。
「何持って来いっつーんだよ?」
「例えば……」
スリー、ツー、ワンとカウントした次の瞬間、快斗の左手から薔薇が一輪現れる。
「うわー!」
コナンが目を丸くすると快斗の手から薔薇を受け取り、しげしげと見つめた。
「……悪ィが男に花を贈る趣味はねーんだ」
「クールビューティーにもなかなか贈らないもんね。本当、照れ屋さんなんだから」
「……」
クスクス笑う快斗に新一は黙って部屋の隅にある椅子に座り込む。
その時、ドアが開くとレポーターらしき人物がカメラマンと一緒に楽屋へ入って来た。
「はじめまして。黒羽快斗さんですね?」
「え?あ、はい」
「日売テレビのレポーターで加納と申します。人気マジシャン、真田一三さんに代わる登板ですが今日の意気込みなど……」
ふいにコナンが黙って楽屋を出て行く。そのどこか寂しげな様子に志保は慌ててコナンを追い駆けた。



「どうしたの?コナン君」
楽屋のある建物から離れた木立の中、志保はコナンにそっと話しかけた。そんな志保に少しの間、躊躇っていた様子のコナンだったが、何かを決意したように彼女の方に向き直ると「……ボク、マスコミの人って苦手なんだ」と頬を膨らませた。
「え…?」
コナンの口から出た意外な言葉に志保は目を丸くしてしまう。
「だって……お父さんやお母さんとどこかへ出掛けるといっつもくっついてくるんだもん。全然プライベートな時間がなくて……日本へ来れば少しはましかなって期待してたんだけど空港で待ち伏せされて……そのせいかな?ボク、大勢の人の前で何かをするのが苦手なんだ」
新一が生まれた時と違い工藤優作は今や世界的に著名な推理小説家だ。おまけに妻の有希子も『闇の男爵夫人』ともてはやされる始末である。組織の中で監視され続けた過去を持つ志保はコナンの気持ちが何となく分かる気がした。
「……大丈夫よ。私が傍にいるわ。私もあんまり人前に出るのって好きじゃないから」
優しく微笑む志保にコナンが「だったら……お兄ちゃんと一緒にいて辛くない?」と真剣な口調で呟いた。
「え…?」
「だって……新一兄ちゃん、どっちかって言うと目立ちたがりでしょ?」
「『どっちか』って言うより『完全に』ね」
幼いコナンの冷静な分析に志保は思わず苦笑した。
「でも昔に比べればそうでもなくなったのよ。それに事件を解決して表に出るのは彼だけ。私は関係ないもの」
「……お姉ちゃん、本当にお兄ちゃんの事が好きなんだね」
子供らしからぬしみじみとした物言いに志保は顔を赤らめ言葉を失ってしまう。そんな志保の気持ちを察するようにコナンは「じゃあ、ボク、少しこの辺りを探索して来るね!」とニッコリ笑うと、アッという間に姿を消してしまった。



一人トロピカル・マリンランド内をどれほど歩いただろうか?
「あれ?ここ……」
見覚えのある建物にコナンは思わず目を丸くした。いつの間にか敷地内を一周し、志保と別れた場所近くまで戻って来てしまったらしい。
(そろそろ戻らないとお兄ちゃんに叱られる……)
いい加減マスコミも退散しただろうと建物の方へ歩き出した時の事だった。木立の中から女性の歌声が聴こえて来る。力強くそれでいてしなやかな歌声にコナンは無意識にその方向へと歩を進めていた。
大きな木の陰からこっそり覗くと年の頃は十代半ばだろうか?今時の少女にしては珍しく少々がっしりした体格の女の子がアカペラで歌っている。聴いたことのない曲だったがコナンは目を閉じるとその歌声に聴き入った。
どれくらいの間そうしていただろうか?少女が一息つくと額の汗を拭う。
「はい、お水」
「えっ…?」
少女がビクッとした様子で振り返る。水分補給用に置いてあったペットボトルを差し出したのは勿論コナンである。
「びっくりした…!驚かさないでよ、坊や」
少女はにっこり笑うとコナンの手からペットボトルを受け取った。
「お姉ちゃん、歌、とっても上手だね」
「ありがとう。坊や、こんな所でどうしたの?」
「知り合いの人の楽屋にお兄ちゃんと来たんだけどボクだけ出て来ちゃったんだ」
「そうなんだ。知り合いって誰?」
「黒羽快斗っていうマジシャン。お姉ちゃん、知ってる?」
「勿論。真田一三さんの代わりに急遽出演される方でしょ?丁度良かった、『今日はよろしくお願いします』って伝えておいてくれる?」
「……お姉ちゃんも今日のステージに出るの?」
「うん、こう見えても歌手なんだよ。今日は初のワンマンなの」
「へえ……」
「お姉ちゃんの名前は以杏。坊やは?」
「ボク、工藤コナン」
「コナン……日本人にしては珍しい名前だね」
「お姉ちゃんの名前だって変わってる」
「あはは、お姉ちゃんのお母さん、アメリカ人だから」
「ふ〜ん」
「……そっか、コナン君はお姉ちゃんの事知らないんだ。私もまだまだだなあ……」
「あ…ボク、普段アメリカで暮らしてて日本に住んでいるお兄ちゃんのところに遊びに来てるんだ。だから日本で流行ってる歌とか知らなくて……」
「アメリカ…かぁ」
「……どうかした?」
「いつかアメリカでもデビュー出来たらなって思ってるから……」
「お姉ちゃんならきっと出来るよ」
コナンの笑顔に以杏は「ありがとう、コナン君」と優しく微笑んだ。



「……ったく、コナンのヤツ一体どこをウロチョロしてやがるんだ?」
なかなか帰って来ない弟に業を煮やした新一が呟いた。
「ここ、迷子の案内放送入らないからね。一度保護センターへ行ってみる?」
「……その必要はないと思うけど」
落ち着いた声で断定する志保に男二人が目を丸くする。
「志保、お前、コナンがどこにいるのか知ってんのか?」
「さあ。ただね……」
志保の説明に新一が「……マスコミ嫌いで人前に出るのが苦手か」と意外そうに呟く。
「一種のトラウマだと思うんだけど……」
新一と志保の真面目な会話に「……へえ、コナン君って誰かさんと違って繊細なんだ」と、快斗が茶々を入れる。
「何だよ、その『誰かさんと違って』って?」
「言葉通りだけどv ま、俺もどっちかって言えば目立ちたがりだけどね」
「『どっちかと言えば』じゃなくて『完璧に』の誤りだろ?」
男二人の漫才に志保は溜息をつくと、「とにかく!」と話に強引に割り込んだ。
「私達は下手に動かない方がいいんじゃないかしら?心配しなくてもコナン君はもう少し経ってマスコミの人が楽屋から出て行けば帰って来ると思うわ」
ピシャリと言い切る志保の迫力に新一と快斗は大人しく「はい」と頷く事しか出来なかった。



「コナン君の言葉はとっても嬉しいんだけど、今のままじゃダメだと思うんだ」
きっぱりと言い切る以杏にコナンは目を丸くした。
「どうして?」
「お姉ちゃんのステージ、リップシングだから……」
「リップシング?実際には歌ってないって事?」
「うん。勿論バラードは生だけど、ダンスの激しい曲はどうしても声が震えるから。本当は踊りをもう少し簡単にして生で歌いたいんだけど、どうしても『ダンスの以杏』を期待されちゃっている面もあるからね」
「……」
「あ、ごめんね。変な事話して」
以杏は話を打ち切るように立ち上がると「コナン君、今日のステージのチケットは持ってるの?」と、コナンの目線に合わせるように屈み込んだ。
「うん、お兄ちゃんが快斗お兄ちゃんからもらったみたい」
「良かったらお姉ちゃんのライブも見てってよ。黒羽さんの出番が17時半から19時。その後だから」
「うん!」
「今日の座席はフリーだったよね。えっと、ステージが一番良く見えるのは……」
以杏は右手でペンを持つと会場の略図を書き一箇所に印をつけた。そして「じゃあ、お姉ちゃん、そろそろ戻らないといけないから。また後でね」と、笑顔を見せると風のように走り去ってしまった。



「……おっ、やっと戻って来たか」
小さな弟が快斗の楽屋へ戻って来ると新一は椅子から立ち上がった。
「どこ行ってたんだ?一人じゃ遊ぶ所もねえだろ?」
「そんな事ないもん」
「そろそろ探しに行こうと思ってたんだぜ?黒羽のお兄ちゃんは今からゲネプロらしいからな」
「ゲネプロ?」
「本番通りに一度リハーサルする事さ」
「それってボク達は見られないの?」
「あん?」
コナンの意外な発言に新一が眉をしかめる。
「せっかく本番のチケットがあるんだ。二度も見る事ねえだろ?それよりまだ乗りたいアトラクションがあるんじゃねえか?」
「……」
新一の言葉にすっかり押し黙ってしまったコナンを見かねたのか、快斗が「良かったら俺の方から主催者側に聞いてみようか?」と口を開いた。
「……オメーの手品はイヤって程見てるって言っただろーが」
「名探偵はね。でもコナン君が見たいって言ってくれるのは嬉しいけどv」
「あ……ううん、いいよ、快斗お兄ちゃん。本番、楽しみにしてる」
「嬉しい事言ってくれるね〜、誰かさんと違って」
「……んじゃ、黒羽、邪魔したな」
新一は志保とコナンを促し快斗の楽屋を後にした。



午後3時。トロピカル・マリンランド内の喫茶店はどこもかしこも混み合っていた。
「ここも七組待ちか……」
「仕方ないわよ。ちょうどティータイムだし」
その時、新一の目に見慣れた人物が今夜のショーのステージがある方向へ歩いて行く様子が飛び込んで来た。
「高木警部補……?」
「……どうやら何かあったみたいね」
「……」
無意識に高木達が歩いて行く方向を目で追う新一に志保が肩をすくめる。
「……本当、あなたと来るといつもこうね」
「え?」
「行ってらっしゃいよ。私はコナン君とここでお茶でもしてるから」
「志保……」
「名探偵さんも大変ね」
志保の笑顔に「すまねえな」と走り去ろうとした瞬間、突然、背後から上着を引っ張られ、新一は危うくその場に転びそうになった。犯人は言わずもがな、コナンである。
「ボクも行く!」
「あん?」
「ボクも行きたい!いいでしょ?お兄ちゃん…!」
その真剣な瞳に新一はかつて父、優作が目暮に呼び出された時の自分を思い出し思わず苦笑した。
「好きにしろ。ただし、勝手に色んな物に触るなよ」
「うん!」
二人の様子に志保は「血は争えないわね……」と呟くと新一、コナンとともに高木が去った方向へと歩き出した。



「……という事はゲネプロが終わるまでは確かにいたんですね?」
「はい、アンコールの曲まで歌って……その後、てっきり楽屋に戻っているものだと思っていたのですが……」
オロオロと答える男に高木がふーむと考え込むように手を顎にかけた時だった。「何かあったんですか?高木警部補」という聞き覚えのある声に振り向くと、工藤新一が立っている。
「く、工藤君?どうして君がここに?」
「志保と弟を連れて遊びに来ていたんです」
「弟…?」
「……はじめまして、工藤コナンです」
新一に促され頭を下げるコナンに「へえ、知らなかったよ、君に弟がいたなんて」と高木が目を丸くする。
「普段は両親とアメリカで暮らしていますから……」
「あれ?……この子、どっかで見た気が……それにコナンって……」
「そ、それより高木警部補、何かあったんですか?」
高木が『江戸川コナン』の存在を思い出すのを遮るように新一は慌てて話の矛先を変えた。
「実は今日、ここでライブを行う予定の歌手が突然消えてしまったんだよ」
「歌手って…まさか以杏お姉ちゃん!?」
「あれ、コナン君よく知ってるね」
驚いたように目を丸くする高木に対し一方の新一は「誰だ、それ?」と言いたげな表情で志保を見る。
「いなくなったのは二宮以杏さん、17歳。今、人気上昇中の女性歌手だ」
「警察が動いているという事は犯人から何らかのコンタクトがあったんですね?」
「ああ、彼女の命が惜しかったら一億円用意しろという内容の脅迫電話が30分ほど前にあったそうだ」
「……あの刑事さん」
ふいに高木の事情聴取を受けていた人間のうち一番年長と思われる男が口を開いた。
「何でしょうか?」
「その方はもしかして名探偵と名高い工藤新一さんでは……?」
「ああ、ご存知でしたか?」
「工藤さん、お願いです、何とか以杏を見つけて下さい!」
高木を押しのけるようにして自分に掴み掛かって来る男に新一は「……失礼ですが、あなたは?」と返した。
「ああ、工藤君、ボクから紹介しよう。この方は以杏さんの所属事務所の社長で安倍空汰さん。その横にいる若い男性がマネージャーを務める千葉実さん。その横の女性が付き人を務める土井絵梨香さんだ」
安倍と千葉が右手で名刺を取り出すと新一に差し出した。絵梨香は黙って頭を下げる。
「……問題は誘拐犯の目的ですね。要求を素直に受け取れば金目当ての犯行という事になりますが、今日のライブを潰す事が目的とも考えられます。以杏さんの命を狙った犯行という線も捨てられませんし……」
新一は考え込む時の癖で顎に手をかけた。
「そうなんだよ。取りあえず安倍さんには一億円の手配はしてもらっているんだけどね」
「容疑者は浮かんでいるんですか?」
その言葉に高木が新一を部屋の隅に引っ張っていくと、「それなんだが……」と、声を潜めた。
「……ホラ、あの三人も首からかけているだろう?あのパスがないと彼女の楽屋には入れないらしいんだよ。しかも楽屋入口の警備員の話では彼女がいなくなった時間あの三人以外に出入りした人間はいないらしい」
「犯人はあの三人のうちの誰かという事ですね。動機については?」
「犯人の意図が分からない事には調べようもないんだが……今のところそれらしきものは三人ともないんだよ」
「そうですか……では」
「ねえ、刑事さん」
新一の言葉を遮るように高木のブレザーをコナンが引っ張る。
「何だい、コナン君?」
「以杏お姉ちゃんの楽屋、見せてくれない?何か手がかりがあるかもしれないよ?」
「あ、ああ、そうだね。行こうか」
「……」
自分が今まさに言おうとした台詞を持って行かれ、新一は思わず黙ってコナンを睨んだ。



以杏の楽屋は荒らされた様子もなく争った形跡もなかった。
「犯人は顔見知りか……」
部屋に一歩入ると新一は独り言のように呟いた。
「以杏さんの写真はありませんか?被害者の顔や特徴を知らない事には捜査のしようがありませんから……」
「あ…新聞や週刊誌の記事でよろしかったらここに……」
絵梨香が雑誌の山から左手でバインダーを掴むと新一に差し出す。どうやら日付順に綺麗に整理されているらしい。
「ちょっと失礼」
新一は椅子に腰掛けるとバインダーをめくっていった。デビューイベントの様子やサイン会の様子以外にいわゆるオフショットもあり、ブラウン管で以杏を見た事がない新一にも彼女がどんな人物か伺い知る事が出来た。
「お兄ちゃん、ボクにも見せて!」
コナンが隣の椅子に座り込むとバインダーを覗き込む。
「あん?」
「ボク、ちょっとだけど以杏お姉ちゃんとさっきお話したもん。お兄ちゃんが気付かない事で何か気が付く事があるかもしれないよ?」
「そっか…って、オメーいつの間に!?」
「さっき一人でブラブラしている時、歌の練習をしてた以杏お姉ちゃんに会ったんだ」
いくら子供とは言え有名人が自分から好き好んで声をかけるとは思えない。声をかけたのはおそらくコナンだろう。無邪気なところはどうやら有希子に似たようで新一は思わず苦笑した。
二宮以杏という少女が大体どんな人物か把握出来たところで新一は高木とともに楽屋の中をくまなく調べ始めた。
「ん…?」
新一の目が楽屋の隅に置かれたアコースティックギターを捉える。
「以杏さんはギターを弾かれるんですか?」
「え?あ…趣味で作曲とかしていたみたいですけどステージでは弾いた事はないと思います」
「なるほど……」
「ねえ、お兄ちゃん」
突然、コナンが新一の服を引っ張った。
「何だよ?」
「ここに何か書いてあるよ」
見ると鏡台の鏡に口紅で文字が書かれている。
「『ド』か…?」
「もしこれが以杏お姉ちゃんが書いたものだとしたら犯人を示すメッセージかもしれないよ」
「その可能性はあるな。容疑者の中で安倍空汰さんは『ソ』、千葉実さんは『ミ』、土井絵梨香さんは『ド』だから……」
「違うよ。安倍さんが『ラ』、千葉さんが『ド』、土井さんが『レ』か『ミ』だよ」
「あん?」
「以杏お姉ちゃんはギターを弾くんでしょ?。ギターを弾く人は普通コードで言うんじゃない?コードで言うと『ドレミファソラシド』は『CDEFGABC』だよ。だからイニシャル『S・A』の安倍さんは『ラ』、『M・C』の千葉さんは『ド』、『E・D』の土井さんは『レ』か『ミ』って訳さ」
「……土井さんの犯行に見せかけた千葉さんの犯行だって言いたいのか?」
「ち、違う!僕じゃありません!!」
新一とコナンの会話に千葉が顔を真っ青にして叫ぶ。
「しっかし、今から誘拐されるって人間がこんな手の込んだメッセージを残すか?」
「以杏お姉ちゃんは日本人とアメリカ人のハーフなんだ。アメリカ式で言ったら『ド』は『C』だよ」
「なるほど…ね」
新一は高木の方を振り向くと、黙ってコクッと頷いた。
「……千葉さん、別室でお話を聞かせて頂けませんか?」
「は、はい……」
高木に促され千葉は以杏の楽屋を後にした。



「……上手く行ったようだな」
その人物は車のトランクを開けると面白そうにクックと喉を鳴らした。
「これで二宮以杏は終わりね」
「ああ、このタイミングでお前がデビューすれば……」
「……残念ながら、あなた方の思い通りにはさせませんよ」
驚いて振り向いた二人の目に工藤新一の姿が映る。
「なっ…!?」
土井絵梨香は思いがけない人物の登場に言葉を失った。
「あの口紅で書かれた『ド』はフェイク。以杏さんが日本人とアメリカ人のハーフである事、そして楽屋にあったギター、これらのヒントから残されたメッセージが『C』であると思わせようとしたんじゃありませんか?千葉さんの犯行に見せかけ、時間を稼いで以杏さんのステージを潰す事が目的だったんでしょうが、僕の目は誤魔化せませんよ」
「ど、どうして……?」
「あなたが見せてくれたバインダーに保存されていたサイン会の写真ですよ。あの写真で以杏さんは右手にペンを持っていた。しかし、あの部屋にあったアコースティックギターは通称レフティー、つまり左利き用の物だったんです。あれ、あなたのギターなんじゃありませんか?」
「……」
「あのギターを見て真犯人は左利きだと確信しました。容疑者の中で左利きはあなただけでしたからね。だから弟の推理に納得したフリをしてあなたをずっと見張っていたんですよ。以杏さんの安全の確保が一番でしたから」
「ギター……警察の捜査をミスリードするためにわざと置いた物に足元をすくわれるなんて……皮肉よね」
「でもどうして付き人のあなたが以杏さんを?」
「……アイツが…千葉が悪いのよ!以杏なんか見つけてくるから……あの時デビューするのは私だったはずなのに……!」
「なるほど、それで千葉さんに罪を……」
「そうよ!」
絵梨香は不敵に微笑むと「フッ……名探偵だか何だか知らないけど一人でのこのこやって来るとはあなたもバカよね」と、皮肉な視線を新一に投げた。気が付くといつの間にかトランクの中にいた男が気を失った以杏を抱きかかえ、その首筋にナイフを当てている。
「動くなよ、動くとこの娘の命は……」
新一は男から目を逸らさないようにしつつ左足で足元にあった小石をたぐり寄せた。が、小石を男の手に目がけて蹴ろうとした瞬間、ゴウッという轟音とともに何物かが風のように新一のすぐ脇を吹き抜け男の顔面に強烈にヒットする。
「ガッ…!!」
見ると気を失って地面に倒れた男の横にサッカーボールが一つ転がっている。プシューっと音をたてて萎むボールに新一は「……ったく、オメーは人のお古をいくつ使ってんだよ?」と後ろを振り返った。
「抜け駆けはずるいよ!お兄ちゃん!」
「抜け駆けって……あのなぁ、危険だから連れて来なかったんだぞ!……ったく、人の気も知らないで」
「まあ追跡メガネの発信シールを貼られた事に気付かなかったあなたもあなたなんじゃない?」
「志保、おまえも一緒にいたなら止めろよな」
「あら、そんな事が出来る訳ないって事くらいあなただって分かってるでしょ?」
「……」
志保の言葉に新一は黙ってコナンを睨んだ。
「大体、ボクの推理が間違ってたなら、どうして言ってくれなかったの?」
「バーロー、犯人のフェイクに引っかかるオメーが甘いんだよ」
「う……」
新一はウインクするとかつて優作に言われた台詞をコナンに言った。
「まだまだ観察力が足りないようだね?コナン君」



「……残念だけどこの足で今日のステージは無理ね」
一通りの診察を終えると志保はきっぱりと言い切った。
「随分長い間、不自然な格好で足を縛られていたせいで筋を痛めてしまっているわ。医者として許可出来ないわね」
「そんな…!」
以杏はショックのあまり言葉を失ってしまう。
「志保お姉ちゃん、何とかならないの!?」
「ごめんね、何ともならないの」
今にも泣き出しそうなコナンの頭を志保は優しく撫でた。
「そうですか……では我々は今後の事を検討したいと思いますので……」
肩を落とす安倍に新一は一礼すると志保、コナンとともに楽屋を後にした。



快斗のショーは予定通り17時半からスタートした。真田一三の代役という事であまり期待していなかった観客もすぐにその腕を見抜いたようで食い入るように見つめている。
「……これで黒羽も一流マジシャンの仲間入りだな」
「そうね」
「よぉ、工藤、ここにおったんか」
突然、背後から聞き慣れた声がしたかと思うと服部平次がニッコリ笑っていた。
「どうしたんだ?早いじゃねえか」
「……ったく。ごっつ簡単なトリックやったで。警察ももう少ししっかりしてくれんとあかんなあ」
「……って、おめーも警察の人間だろ」
平次は新一の突っ込みを無視すると「ここ、空いてるみたいやな。邪魔するで」と、その横に腰を下ろしてしまった。
「え…?」
気が付くといつの間にか新一の隣に座っていたはずのコナンの姿が忽然と消えている。
「志保、コナン知らねえか?」
「ちょっと前にトイレへ行って来るって席を離れたわよ。一緒に行くって言ったんだけど一人で行けるって言うから……」
「……ったく」
「まあええわ。コナン君戻って来たらオレの膝の上でええやろ」
相変らず子供好きな平次に新一は思わず苦笑した。



「おい、いくら何でも遅くねえか?」
新一が腕時計を見ると間もなく19時になろうとしていた。
「そういえば以杏さんのライブもどうなるのか何の放送もないわね」
「なんや?何かあったんか?」
訳が分からないと言いたげな平次に新一は事の次第を説明した。
「ほんま、工藤も事件に憑かれとるな?一度お祓いでもしてもらった方がええんちゃうか?」
口ではそう言いつつ平次はゲラゲラ笑っている。
「志保、オレ、ちょっとコナンを探しに行って来っから」
「私も行くわ」
二人が立ち上がろうとしたその時だった。「大・丈・夫v」という声にその方向を見るといつの間にか優作と有希子が二人の後ろの席に腰を下ろしている。
「と、父さん?母さん!?」
「コナンちゃんの事なら心配いらないわよ」
「どういう事ですか?」
「ウフフ、ヒ・ミ・ツv」
「……心配する必要はないという事ですね?」
「で?何で父さんと母さんがここにいるんだよ?」
ふてくされた顔で呟く新一に有希子が「本当、新ちゃんって探偵なの?」と呆れたように肩をすくめる。
「どういう意味だよ?」
「だって今日一日、優作は新ちゃんを、私は志保ちゃんを尾行してたのに全然気付かないんだもん」
「な、何でそんな…!?」
「あなた達に子供が生まれたらどんな感じになるか見てみたくってv」
「子供って…あのなあ……」
「……確かにAPTXの後遺症を心配するお前や志保君の気持ちが分からないでもない。しかし心配ばかりしていても何も始まらないだろう?」
「今日の感じだと新ちゃんも志保ちゃんもいいお父さん、お母さんになれそうだし。孫の顔が見られる日もそんなに遠い話じゃないかもねw」
「……」
優作と有希子の言葉に新一が反論出来ずにいたその時、舞台が暗転した。観客のボルテージが一気に上がって行く。
が、一本のスポットライトに照らされた舞台には華やかにステージで歌い踊る歌手ではなくKIDの格好をした快斗が立っていた。
「怪盗KID…!?」
「エッ?嘘…!?」
「……本物より格好いいつもりで出て来たのですが」
ざわめく観客に快斗は苦笑するとシルクハットとモノクルを外した。その言葉に観客からドッと笑いが起こる。
「さて、今から皆様お待ちかね、二宮以杏のライブが始まるのですが……本日はいつもと趣向が違うようです」
そう言って快斗が指を鳴らした瞬間、ステージにもう一本スポットライトが当たる。が、そこに照らし出されたのはTシャツにジーンズという普段着のまま椅子に腰かける以杏の姿だった。
「皆さん、こんばんは、二宮以杏です。今夜のライブを楽しみに来て下さった皆さんには申し訳ないんですが、実は私、リハーサル中に足を怪我しちゃったんです」
ごめんなさいという言葉とともに以杏が深々と頭を下げる。
「本当は中止にする事も考えたんですが……」
次の瞬間、ステージがパッと明るくなったかと思うとアコースティックギター、ベース、ピアノ、パーカッション、コーラスといったバックの面々が現れた。
「ノリノリのステージを期待して下さった方々には申し訳ないんですが、今夜はアコースティックライブに変更させて頂きます。一生懸命歌いますのでよろしくお願いします」
彼女の言葉にしんと静まりかえっていた会場だったが、やがてどこからともなく拍手が起こった。
「……皆さん、ありがとう……それでは聴いて下さい。『For You』……」
バックが演奏を始めると以杏は気持ち良さそうに歌い出した。その様子に会場が優しい空気に包み込まれる。
「……なるほど。これなら足に負担はかからないって訳か」
新一の言葉に志保はクスッと笑った。
「あんまりこういう音楽って聴かないけど……こうやって聴くと素敵ね」
「そやな。ま、音痴の工藤には理解出来ひんかもしれんけど」
「うっせーな……」
以杏が一番、二番を歌い間奏になった時だった。端の方にスポットライトが当たり現れた人物に新一は驚きのあまり椅子から転げ落ちそうになった。
「コ、コナン…!?」
バイオリンを優雅に弾いているコナンの姿にさすがの志保も呆気にとられる。
「あら?言ってなかったかしら?コナンちゃん、ホームズのTVドラマ見てバイオリンに興味持ってね、二年前から習ってるの。カリフォルニアの州大会ではジュニアの部で優勝してるのよ」
「けど、アイツ人前で何かやるのは苦手だって……」
「……好きなバイオリンを持つと人格が変わるといったところですか?」
冷静に分析する志保に有希子が「そうみたい。舞台度胸は私譲りみたいねv」とウインクを投げる。
「こんくらいの曲なら初見でOKちゅう訳か」
「……なんか今回はいいところを全部コナン君に持っていかれたみたいね」
志保の言葉に新一は黙って苦笑する他なかった。



後日。
以杏初のアコースティックライブと話題になったステージはDVD化された。
そのクレジットには『Special Thanks for DETECTIVE BROTHERS』と記されていたのだが、『Violin Conan Kudo』というクレジットにばかり目がいってしまった新一がその事に気付いたのは随分後の話だったという。



あとがき



弟コナン君シリーズ第二弾作品は一応、兄弟推理対決ものです(本格的な事件じゃありませんが)
兄の新一と違いバイオリンが得意なコナン君ですが、実は絵がド下手という裏設定があったりします@爆笑  
探偵としてはどっちがいいのかな?
ちなみに以杏ちゃんのモデルはブレイクする前のBoA嬢です。



絢女さんより



またまた、当サイトのオリジナル設定、弟コナンのパラレル小説を書いて下さいました。
ほたるさん、いつもありがとうm(__)m
兄弟推理バトル、今回は新一に軍配ですね。
いや、でも、こういう生意気なお子さまは、小さい頃にへこまされておかないと、幼児化する前の鼻持ちならない新一みたいになりますからね。
きっと、弟コナンはいい子に育つ事でしょう。