0 三人の日常



 「おい博士ー、いる…ウワッ!?」
 「キャッ…!!」
 江戸川コナンがいつものように呼び鈴も鳴らさず阿笠邸の玄関のドアを引いたのと、灰原哀が買い物に行くため外に出ようと中からドアを押したのはほぼ同時だった。ドアにかけられるはずだった力が行き場を失い、バランスを崩した哀の体重がコナンにかかり、結果、二人揃ってその場に倒れ込んでしまう。
 「イテテ…」
 何とかコナンが体を起こすと、哀の悲鳴に驚いて飛んで来た阿笠が彼女を助け起こしているところだった。
 「こりゃ、新一!哀君が怪我でもしたらどうするんじゃ!」
 哀の体重を受け止め、ダメージが大きいのは自分の方だというのに咎める阿笠にさすがのコナンもムッとなる。
 「おい、博士、怪我を心配をされるのは下になったオレの方じゃねえか!?」
 「お前がいきなり扉を開けたりするからじゃ!」
 取り付くしまもなく阿笠はそう言うと「大丈夫かね?」と再び哀を心配している。
 「大丈夫よ、ありがとう」
 哀は阿笠ににこやかに答えると立ち上がったコナンを見て怪我がないことを確認し、
 「それじゃあ博士、行って来るわ。工藤君もあんまり博士の発明の邪魔をしないで頂戴ね。今、せっかく上手くいってるみたいだから」
 と言い残し、さっさと買い物に出掛けてしまった。
 「チェッ、何だよ、博士の邪魔って。オレはガキかっての!」
 コナンはぶつぶつ言いながら笑顔で見送っている博士を尻目にさっさと家の中へと入って行った。