「ゲームの発表会〜?」
江戸川コナンは明らかに不快な声を出した。
「そう、園子のお父さんが出席する予定だったんだけど、急に外せない用事が出来ちゃったらしくてね。園子が代理で出席するんだって。それで私達も招待してくれたって訳」
毛利蘭はそんなコナンの様子にまったく気付いていない様子だ。
「お父さんと私とコナン君、あと探偵団のみんなも良かったらどうぞ、って」
「おじさん、行くの?」
「お父さんの目的はパーティーのお酒だろうけどね」
(はは……やっぱり)
コナンは心の中で毒づいた。
「残念ながらゲームには参加出来ないんだけど、美味しい料理を食べに行くだけでもいいじゃない?みんなに予定を聞いてみてくれる?」
「うん、じゃあ、明日学校で聞いてみるよ」
好奇心旺盛なあの三人の事である。聞くまでもなく答えは分かりきっていた。
(灰原は……ま、アイツはパスって言うだろうな……)



「それって、コクーンの発表会じゃないですか!?」
翌日。下校途中、昨日の蘭の話を切り出すと、円谷光彦が目を輝かせた。
「コクーン?何だそれ?」
「コナン君、知らないの!?」
吉田歩美が驚いたように叫ぶ。
「ファイナル・クエストで未だに苦労してるコナンが知ってる訳ねえよな」
すかさず茶々を入れる小嶋元太にコナンは「うっせーな……」と顔をしかめた。
「コクーンっていうのは今、IT産業界で一番注目されている次世代ゲームマシンの事です」
光彦が得意気に話し出す。
「何でも繭の形をしたカプセルに入り、催眠状態の中で音声認識システムを持つゲームと対話しながらバーチャル・リアリティの世界で遊ぶ、という最新型ゲームだそうです」
「光彦、お前、パンフレット読んでるだけじゃねーか」
「コクーンの存在すら知らなかったコナン君に言われたくありませんね」
「でもよお、どうせだったらコクーンやりてえよなあ」
「だからそれは無理だって言っただろ?」
「完全な覆面発表会ですからね。会場に行けるだけでもラッキーですよ、元太君」
「そうそう、美味しい料理も食べ放題みたいだしv」
「うな重もあるのか?」
「うな重はないと思いますけど……」
「……で、お前はどうする?」
コナンはそれまで黙って会話に耳を傾けていた灰原哀に声をかけた。
「そうね……パーティー会場で博士を迎えるのも悪くないかもね」
「え…?」
コナンは合点がいかない。
「あら、博士から何も聞いてないの?」
「二週間留守にするって事以外は別に……」
「そう」
「その……コクーンとかいうゲームと博士が何か関係あるのか?」
「さあ。そのうち連絡あるんじゃない?」
哀はクスッと笑うとそれきり何も言わなかった。



「コナン君、電話だよ」
その夜。ちょうど風呂から上がったばかりのコナンに蘭から受話器が渡された。
「新一君、わしじゃ」
電話の主は阿笠だった。
「そろそろかかって来る頃だと思っていたよ」
「コクーンの発表会に君も来る事になったそうじゃな」
「ああ、園子ん家の招待でな」
「どのみちワシが誘うつもりじゃったから、手間が省けたというものじゃ」
「どういう意味だよ?」
「優作君もそのパーティーに出席するんでな。久しぶりに顔を合わすのも悪くないじゃろうと思ってのう」
「父さんが?何でそんなパーティーに?」
「来れば分かる。それでは当日を楽しみにしておるからな」
それだけ言うと阿笠は一歩的に電話を切ってしまった。
「……ったく、何なんだよ」
コナンは不機嫌そうに呟くと受話器を置いた。