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「モランってヤツはイカサマ野郎だ!!」
諸星秀樹の言葉にクラブ中の男達が一斉にコナン達の方に目を向けた。
(しまった…!)
コナンは心の中で舌打ちした。
「小僧、口の利き方に注意するんだな!!イカサマの証拠でもあるってのか!?」
モラン大佐が眉をひそめるとテーブルから立ち上がった。
「勿論さ!!アンタと仲良しなんだろ?そこの猿」
秀樹の言葉に、今度は大佐と対戦していた男がギクッとして振り返る。
「そうさ、おじさんのカードを見て、スペードの3なら右手で黒い実を3個、ダイヤの5なら左手で赤い実を5個食べてたよ」
自分が見破った訳ではないくせに、堂々と言ってのける。
「モラン!!汚ねえぞ!!」
「フン!!引っ掛かるてめえが悪いんだよ!!」
「何だと!?」
大佐の悪びれもしない態度に相手の男がカッとなり、掴みかからんばかりの勢いで迫った。
「おっと…」
その行動を諫めたのは秀樹だった。大佐に向けて銃を構えている。先ほどホームズの家にあった銃だった。
(あいつ、いつの間に……!)
コナンは自分が最後にホームズの部屋を出なかった事を後悔した。
「そっちの揉め事は後にしてもらおう。モリアーティ教授はどこにいる!?」
秀樹の言葉にモラン大佐の顔色が変わった。
「小僧…あのお方の名をどこで!?」
わっと掴みかからんばかりの勢いに、秀樹は「と、止まれ!!」と叫ぶと同時に引き金を引いていた。衝撃で秀樹の身体は床に転がってしまいすぐ後ろにいた滝沢進也も巻き込まれた。
弾丸は大佐の肩をかすったようだった。
「くっ!!ガキどもを捕まえろっ!!」
大佐の命令に男達が一斉にコナン、秀樹、進也目がけて突進して来る。
さすがにサッカー超高校生級と言われただけありコナンは男達の攻撃を難無くかわしていった。
(アイツらは…!?)
秀樹と進也の方に振り返った時、一人の男が「覚悟しろ!!このガキッ!!」と殴りかかって来た。スッと避けようとした瞬間、「はあっ!!」というかけ声とともに男がひっくり返る。
「ら、蘭姉ちゃん……」
「大丈夫?コナン君!」
「う、うん……」
「相変わらず凄えや」とコナンは男に同情した。
気がつくといつの間にか少年探偵団の三人や江守晃、菊川誠一郎も店の中に入って男達にあの手この手で攻撃を加えていた。
「おい、マズイぞ…これじゃ全員参加じゃねえか!!」
状況を把握しようと立ち止まったのが仇になった。はっと気付くと一人の男がコナンの背後を捕らえていた。
「危ない!コナン君!!」
どこからか声がしたかと思うとコナンの身体は誰かに抱きしめられ、床に倒れた。バキッという鈍い音がするのと同時に蘭の気合いが聞こえ、「がっ!!」という悲鳴とともに誰かが床に倒れる音が聞こえる。
「菊川君!!」
コナンを庇ったのは誠一郎だった。その身体が虹色の光に包まれている。
「おい、しっかりしろ!!」
「やられちゃった……これで助けられた借りは返したよ……」
誠一郎がニッコリ微笑むと彼の身体は消えてなくなっていた。
「菊川……」
秀樹、進也、晃の三人は呆然と立ち尽くした。
一方、その間も危機は続いていた。歩美が一人の男にぴったりマークされていたのだ。光彦がスライディングして男の足を払う。
「歩美ちゃん、大丈夫ですか?」
「ありがとう、光彦君」
ホッとした次の瞬間、二人は両側から男にビール瓶で殴られてしまった。二人の身体が虹色の光に包まれる。
「み、光彦君?」
「……歩美ちゃん、ボク達ゲームオーバーのようです」
「歩美!!光彦!!」
コナンの叫びに歩美が「コナン君、私達を絶対生き返らせてね」と言って苦笑する。そのまま二人の姿は消えてしまった。
(やべえっ!このままだと全員ゲームオーバーだ!!どうする!?)
一番まずい展開にコナンは苦悩した。
その頃、モラン大佐は秀樹が床に落とした銃を拾い上げ、S・Hのイニシャルに気付いてニヤリと笑みをこぼしていた。



哀はSビルの総合案内所へやって来た。普段なら受付に女性が座っているのであろうが、時間外である上、米花シティーホールの接待に回っているのか、誰一人いなかった。
各階案内のパネルを見上げる。哀の身長でもかろうじて最上階まで見る事が出来た。
8階コンピュータールームのところで目を止める。
(木を隠すなら森の中……ましてや敵の陣地内……悪くないわね)
哀はちょうど一階で止まっていたエレベーターに乗り込んだ。