プロローグ



「嘘……」 大きな瞳を更に大きく見開いて絶句する親友、吉田歩美に灰原哀は「嘘じゃないわ。私、中学は別の学校に進学するの」と同じ言葉を繰り返した。
「そんな……私、てっきり哀ちゃんも帝丹中学に進学するもんだとばかり思ってたんだよ?」
江戸川コナンが工藤新一に戻り、その存在が消えて早五年。ずっと行動を共にして来ただけに歩美が寂しがるのも無理はない。
「それで……哀ちゃんはどこの中学に行くの?」
「横浜にある中高一貫制の女子校よ。全寮制だから皆と会える機会も減るでしょうね」
「でも夏休みとか帰って来るんでしょ?」
「それがなかなか教育熱心な学園で宿題の量が半端じゃないらしいの。部活動もあるし、盆と正月以外は寮と学園の図書館を往復して過ごす事になりそうだわ」
「そんな……」
涙を堪えきれず泣き出す歩美に哀は「……ごめんなさいね、実は結構最近決まった話で私もなかなか切り出せなかったの」とその肩を優しく抱き寄せた。
哀のこの言葉に偽りはなかった。事実、一ヶ月前にはそんな進路など微塵も考えていなかったのだから。