Prologue



「ん……」
目を開けると時計の針は午前6時を指していた。探偵という仕事柄寝起きはいい方だったが、それでも目覚まし時計が鳴る前に眠りから覚める事は珍しい。
「ふあ〜」
上体を起こし伸びをした時その『異変』に気付く。
(あれ?オレ……)
自分は今、ジンに飲まされたAPTX4869が原因で身体が縮んでしまい幼馴染の毛利蘭の家に居候しているはずだ。それなのに……
視界に映る自分の手足は紛れもなく高校生のスラリとしたものだ。声を出しても高い子供の声ではなく低い男の声である。何より今、自分がいるこの部屋は幼い頃から過ごした工藤邸の自室だった。
「一体……」
摩訶不思議な出来事にベッドを飛び出し洗面所へ駆け込む。
鏡に映る自分の姿は紛れもなく高校生『工藤新一』だった。
「どうなってんだ……?」
試しに頬をつねってみても目の前の光景は変わらない。
「そう…だよな。人間の身体が縮むなんて……ありえねえよな」
長い夢でも見ていたのだろうと納得し、思わずハハッと笑った時だった。ふいに鏡の中の『工藤新一』が歪んだかと思うと『江戸川コナン』が映し出される。
「なっ…?」
驚きのあまり右手を鏡に触れると鏡の中のコナンが左手を重ねて来た。そして困惑する新一を嘲笑うように口を開く。
<Heads or Tails?>
「……!?」
次の瞬間、目の前が真っ暗になり新一は意識を失った。